事情の変更

養育費に関するよくあるご要望として、『夫が再婚しても減額しない』と公正証書に記載したいというものがあります。
また逆に、『妻が再婚した場合は養育費を支払わない』というご要望もあります。
これらは「事情の変更」といって、将来社会の経済事情や、当事者そのものの事情が変わった場合について養育費が増減されることがあり、その事情の変更による養育費の増減を制御しようという取り決めです。

「再婚しても減額しない」「再婚したら払わない」といった養育費に関する取り決めを公正証書に記載することは出来るのでしょうか。そして記載出来たとして、実際に当事者間に事情変更があった場合、この取り決めを根拠に相手方の養育費の増減請求を拒絶できるのでしょうか。

養育費の性質

いったん取り決めた内容であるにも関わらず養育費についてはなぜ「事情変更」による増減が認められるのでしょうか。
これは養育費が支払う親の子に対する扶養的な義務に基づくものだからです。そしてこの扶養義務は「生活保持義務」と呼ばれ、「自分と同一程度の生活をさせる義務」であると言われています。
つまり自分の生活水準が上がれば、それだけ子の生活水準も上げてあげなくてはいけませんし、逆に下がれば無理して(例えば借金などして)支払うべきものではないことになります。
この性質により養育費は事情変更による増減が認められます。

公正証書に記載すること

ではこのような取り決め(再婚しても減額しない等)を公正証書に記載することは可能なのでしょうか。
結論から言えば、記載すること「は」可能です。「は」と強調したのには理由があります。

取り決めの有効性

それはこの取り決めが確定的な取り決めになり得るか重大な疑義が生じるからです。
このような取り決めをしたとしても、実際に事情変更が生じたときに相手方は調停等を通じて増減を請求できると考えられています。